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2011年2月11日金曜日

"チボー家の人々" Roger Martin du Gard



二十世紀のはじめからWWIにかけての十数年間のフランスを舞台にした大河小説。
チボー家とその友人を中心に物語が展開される。

ジャックは少年時代に何もしない時の退屈さと、幸福さを覚える。
少年は焦り、矛盾だらけの世界とそれに上辺だけ合わせている自分に嫌気がさす。
優秀なジャックに期待して笑顔になる父親と、それに従っている兄のアントワーヌ。
そういったものから抜け出して、何か自由にやってみたい。
でも、自由になったとしても、自分には何もできないだろう。矮小な自身の存在に絶望しながらも、「生きるんだ」と彼はつぶやく。「行動するんだ、そして・・・愛するんだ」

やがて父が不治の病に苦しみ、アントワーヌの手で安楽死させられる。
ジャックは大学入学と同時に失踪する。自分探しの旅だ。
故郷での友人が自分の居場所を作っていたことを尻目に、ジャックは 革命家としての人生に惹かれていく。

“それは、子どものころから反抗的で、愚かだったぼくに生きることの意義を教えてくれた。正義の勝利はたやすいと思っていたことの愚かさをさとると同時に、絶望することがさらに愚かであることもわかった。ぼくの反抗の精神も、同じような反抗者たちと社会のために生かせば、はじめて実を結ぶものだと知ったのだ!”

ジャックは大衆の利益は平和であって戦争にはないと断言し、父の遺産を戦争阻止のプロパガンダへ流用することを計画する。アントワーヌはそんな理屈はごめんとばかりに、反対する。

アントワーヌはその後、フランス軍前線に反戦ビラとともに焼け死んだ死体が見つかったとの報告を受ける。
悲しいというより腹ただしく思い、ドイツ軍の毒ガスでやられた喉をおさえ、一枚の写真に目をやる。
死んだジャックの友人と、その妹でありジャックの妻と、その子ども。
子どもはジャックそっくりで、アントワーヌはチボー家のたくましさをその子に見出す。



若さゆえの向こう見ずな態度で早死にするのがより幸福であると判断したジャックと、社会の波と折り合いをつけながら生き永らえたアントワーヌは対照的だ。尤も、アントワーヌも父を安楽死させた時のように、最後には死期を悟り、自ら命を絶った。戦時中という環境においては、このような現代でもありがちな兄弟の性質が大きな二つの分かれた人生を作る。

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