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2011年2月11日金曜日

"ペスト" Camus




アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。
ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。
外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相が描かれる。

人は「慣れる」という能力をもっている。
人の苦しみのうめき声も慣れれば日常のものとして気にも留めなくなる。
人が死に、墓地が足りなくなると、まとめて葬られる人間の亡き骸にはもはや尊敬の念や羞恥心も消失する。動物たちが感染拡大を防ぐために淡々と処分されていく。

こういった状況で、ペストから迷信や教訓めいたものを引き出そうとする人がでてくるのは自然だった。 人はなぜ苦しまなければならないのか。
ある神父は「我々は自我を放棄し、神への困難な愛の道程を受け入れなければならない。この愛のみが苦しみと死を消し去ることができるのです。」といい、数日後死者の仲間入りをした。

主人公の医者リウーは仲間に尋ねた。心の平和に達するにはどうすればいいか、と。
タルーは答えた。
「それは共感ということだ。結局ぼくが心をひかれるのは、どうすれば聖者になれるかという問題だ。」
「君は神を信じていないんだろう?」
「だから、人は神によらずして聖者になりうるか。 これが、今日ぼくの知っている唯一の具体的な問題だ。」

やがてこの騒ぎもペストの衰退とともに収まった。
しかし、ペスト菌は死滅したわけではなく、いつどこの幸福な都市に再発するかは誰にもわからない。

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